切なさと満足感、余韻が残る映画
【Netflix】ロイ・チウ主演・台湾映画「先に愛した人」

Netflixで配信されている台湾映画で、原題は「誰先愛上他的」。
邦題は「先に愛した人」となっているが、中国語の「誰先愛上他的」を訳すと「先に”彼”を愛してしまったのは誰」となり、この物語のキーとなる。

LGBTを題材にした映画ではあるが、同性愛だけでない夫婦・家族・親子、全ての愛を考えずにはいられない映画だ。納得のいく終わり方であったずなのに、自分にも当てはまる何かがあるような…とにかく見た後に余韻が残る面白い映画であった。その余韻は何なのか、私なりにこの映画を考えてみた。



軽くあらすじ

ある男はガンで余命宣告を受けた後、自分らしく生きたいと妻子を置いて、恋人の元に向かった。その恋人とは自由気ままな若い男。やがて男は亡くなり、その保険金は内縁の夫である若い男へ。その事実を知った妻は激怒し、息子は父への複雑な思いと荒れる母への反抗心をあらわにし行動を起こす…

ロウ・チウの生々しい演技に驚く

まずは、男の愛人であるジエを演じるロウ・チウ(邱澤)。イケメンであることは確かなのだが、この映画で彼への認識が変わった。

少しばかり見た台湾ドラマ「進め!キラメキ女子(小資女孩向前衝)」でのロウ・チウは、透き通るような肌をした綺麗でクールなイケメンだった。それが今回は破天荒で、ゲイで、恋人を亡くしてと、かなり難しい役を人間味溢れる魅力的な人物として演じ切った。掴みどころのない破綻した振る舞いの隙間に見せる、恋人を亡くした絶望感。荒々しさと愛しい繊細さ、また残された者が背負う使命感にはリアルなナマっぽさを感じ、見ていて息が詰まる思いがした。

この映画で演技が認められたロウ・チウは、台北映画祭で主演男優賞を獲得した。

女性なら共感せざる得ない

この映画ではロウ・チウの演技もさることながら、夫に捨てられた妻であり息子の母リウ・サンリェン演じるシエ・インシュエン(謝盈萱)の見事な演技を語らずにはいられない。

幸せな結婚生活を送り子供も授かったのに、ある日突然夫からゲイだと告白される。女性なら誰しも一度は「自分の恋人が自分の夫が、ゲイだったら…」と、想像したことがあるのではなかろうか。人間として以前に、生物としての存在を否定される絶望的な気持ちを。

息子が逃げ出すほどヒステリックに荒れ狂う母親の本当の姿は…ストーリーが進むにつれ、女として妻として夫に認められたかったこと、我が人生の空虚さに心が張り裂けそうなるのを必死に留めている一人の”女”であったということに、気づかされる。

真に迫る演技に心を持っていかれそうになる。この映画でシエ・インシュエンは、台北映画祭と金馬奨で、主演女優賞を獲得した。



息子の心が映す景色

若い男に夫を取られ保険金まで取られようとしている母親のヒステリックを嫌い、息子は汚い雑居アパートに住む父親の愛人の家へ一人行くことになる。

劇中の風景は、息子の心情を表しているように感じる。最初は父親の愛人が住む汚くせせこましい雑居アパート。そして部屋に入れば、ノスタルジックな赤い花の壁紙にピアノやギター。物は乱雑に置かれていながらも、息子にとってはカラフルなオアシスに映ったのかもしれない。物語の最後は、閑静で美しく整った住宅街で親子が仲良く歩く風景を見ることができる。
子供の思考から大人へと変わっていく途中で、自分を表現する方法と、自ら解決していく方法を見つけていく。

台湾だからこそ映し出せる風景

物語は汚くて散らかった台湾の雑居住宅から始まる。住民の生活用品が廊下に置かれ、すえた汗の臭いでもしてきそうほど生活感があるアパート。先に愛した人(誰先愛上他的)を制作した監督によると、あえて台北の雑多な部分を映画の重要要素に持ってきたのだとか。

ストーリーの中で何度も台湾の風景は出てくるが、どこも蒸し暑さにシャツが皮膚にまとわりつくあの空気感や、台湾に行ったことがある人なら一度は嗅いだことのあるあの臭豆腐の香りが今にもしてきそうなほど、人間がまさに”今生きている”感じが劇中に湧き出ている。

台湾らしいと言えそうなのだが、キラキラした近代的な部分を避けることで、感情が渦巻き愛憎をむき出しにする人間の性は、どんなにきれいに繕っても完全に隠すことは不可能だと言っているかのようだ。

重めのストーリーにも関わらず、コメディ要素を散りばめて軽さでバランスを取っているあたりもまた、台湾の南国気質に相応しい。

考察

さて、この映画を一体どのように解釈したらいいのだろうか。ある人は「自分らしく生きるとは何なのか」と問うだろう。そしてまたある人は「人は人を傷つけて、はじめて自分の傷に気づくものだ」と感じるかもしれない。

こんなにも情報網が発達した時代でも、変わることがない人間の心の葛藤には嘘偽りがなく共感できるから、見る者の心はモヤモヤとかき乱されてしまう。

愛人・妻・息子の三人の心を追えば、人の心は浄化することができる。そして、苦しみを優しさで打ち消すことができるということだけは、確かなようである。


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