Netflixで一話を見て以来、急速にどハマり中の「ル・ポールのドラァグレース」を紹介する。台湾のLGBT映画に次いでドラァグクイーンとは何事ぞ、と思われるかもしれないが、一応言っておくと書いてる本人はいたってストレート。
現在もNetflix動画配信されている「ルポールのドラァグ・レース」」は、2009年のシーズン1から現在放送真っ最中のシーズン11まで、実に10年間もアメリカで放送されている人気のリアリティ番組だ。
ル・ポールのドラァグレース 概要
アメリカ全土のドラァグクイーンがオーディションで勝ち抜き、選出された十数名でファッションやパフォーマンス・コメディといった様々な分野で競い審査を受ける。審査員に酷評され、涙を流すクイーンもしばしば。最後に「アメリカン・ネクスト・スーパースター」をル・ポールが決定する。
毎週勝ち抜きで、一人ずつ脱落していくのだが、脱落者を決める「口パク(リップシンク)」では、歌と音に合わせてクイーンが決死の覚悟でパフォーマンスに挑む。その高度なダンステクニックやフィギュアスケートばりの表現力には、エンターテインメントを超え感動すら覚える。
伝説のドラァグクイーン、ル・ポール
そもそもドラァグクイーンは、男性が好きな化粧とドレスで飾りパフォーマンスやショーを行うエンターテイナーのことで、ドラァグクイーンショーを見れるお店も存在する。この番組に出会うまでル・ポールを知らなかったが、アメリカでは知らない人はいない。ドラァグクイーン”ル・ポール”はすごい人物だ。
過去にはコスメブランド『M.A.C』イメージガールにも起用され、190cmを超える長身の小顔で、スタイルは抜群のスーパーモデル!化粧もウィッグも手が込んでおり、飛びぬけて美しい。それでいてウイットに富んだ切り返しで、笑いのセンスもある。歌も歌えて、番組内での挿入歌はほぼル・ポールが歌う楽曲だ。
次世代のル・ポールを発掘することが目的のこの番組だが、どのクイーンよりも”ファビュラス(伝説的に素晴らしい)”なのは、絶対的にル・ポール本人である。
エミー賞受賞、とにかく人気
その人気が分かるのが、毎回訪れるゲスト審査員の面々。今までに、レディ・ガガ、クリスティーナ・アギレラ、アリアナ・グランデといったセレブたちがゲストに続々登場している。彼女たちは一様に「出演したかった!」と述べている。
米テレビ界最高峰の「エミー賞」では、作品賞を含め5部門に輝いた。また、ドラァグレースに主演したクイーンが登場する「ル・ポールドラァグレース・ワールドツアー」は、アメリカだけに留まらず、ヨーロッパ・オセアニアにアジアは香港・シンガポールと、英語圏を中心に巡回し、その魅力を振りまいている。
素顔を包み隠さない、人間模様
日本のドラァグクイーンと違いアメリカのドラァグクイーンは、素顔を包み隠さず見せてくれる。メイクテクニックが詐欺レベルに上手だなと思わせる素顔だったり、素顔は超絶イケメンであったり、メイクのビフォーアフターがあるのは見ていて素直に楽しい。
百戦錬磨の修羅場をくくってきたドラァグクイーンは、社会派ドキュメントでひと番組できそうなほど経験が豊富。いじめ、親の反対、摂食障害、銃問題、HIVと、どのシーズンを取ってみても、きらびやかで美しく着飾ったクイーンの心の闇が見て取れる。しかし、闇を見るだけではなく、その闇を様々なチャレンジによって克服していく過程を見るのが、この番組に人々が惹き付けられる理由なのだ。
ル・ポールは言う「スターに脆弱性はつきものだ」と。スターは人間的な弱さを表現できてこそスターであって、その弱さを含め人を魅了する。どこを突いても隙が無いような完璧さでは、スターではないと。何だかとても深い。深すぎる。
ル・ポールドラァグレースと難題に取り組むクイーンたちが人々を惹きつけて止まないのは、ゲイであれトランスジェンダーであれストレートであれ、人間の本質や弱さは皆同じだという「共通点」を見出すからではないだろうか。
ル・ポールドラァグレースについては、今後も書きたいと思う。