「ル・ポールのドラァグレース」シーズン6の見どころ

「ル・ポールのドラァグレース」シーズン6では、Adore Delano(アドレ・デラノ)やBenDeLaCreme(ベン・デラ・クリーム)といった人気・実力を持ったクイーンが多かったのだが、他を上回る圧倒的強者が存在した。そんなシーズン6における見どころを、独断と偏見で紹介する。

ドラァグクイーンがしのぎを削る「ル・ポールのドラァグレース」とはどんな番組か

安定感がケタ違いな絶対王者
ビアンカ・デル・リオ

もしまだシーズン6を最後まで見終わっていない方が読んでいたらネタバレで大変申し訳ないが、優勝はBianca Del Rio (ビアンカ・デル・リオ)だ。本来ならば、王者ではなく女王(クイーン)と呼ぶべきなのだが、迷いなく「絶対王者」と言ってしまいたくなるほど、彼女はトップ・オブ・トップの風格をもってぶっちぎりで勝ち抜いた。

ドラッグクイーンとしてステージに立つ彼女は、コスチュームデザイナーという一面もあり、ファッションセンスと衣装の完成度は、他のクイーンたちを圧倒するものがあった。そしてファッションに加えもう一つ、誰にも負けない強みがビアンカにはある。それは「コメディー・センス」だ。

毒を交えながら、喋りに喋って笑わせるというスタイル。日本で言うと、少し年代は違うが綾小路きみまろが近いかもしれない。エピソード8のスタンドアップ・コメディーショーでは、観客をいじったり、自虐で笑わせたりと完璧なプロのコメディアン芸を見せてくれた。

ファッション・コメディーと飛びぬけて才能がある一方、ダンスや歌は苦手という彼女だったが、一度もボトム2に選ばれず、リップシンクをすることもなく、最後のトップ3まで勝ち進んだ。次週にも優勝が決まるというエピソード12のインタビューで彼女は、「自分と違う多くのクイーンたちの出会いによって、自分が思うより自分が”いじわる”な人間でないことに気がついた」と語った。エピソード8では、自分に自信が持てなかったペアのトリニティ・K・ボネットを終始励まし続けた。もちろん、彼女特有の毒のあるジョークを添えて。そしてAdore Delano(アドレ・デラノ)にはコルセットを貸してあげたりと、ビアンカの毒舌に反して心優しく親切である一面をシーズン6を通して知ることができた。彼女が素晴らしい実力者であると同時に、素晴らしい人格者である点が、揺るぎない人気の理由だろう。

シーズン6優勝後のビアンカは、主演映画に出演したり、ソロのコメディーショーでアメリカ大陸だけでなく、イギリス・ヨーロッパ・オセアニア・アフリカとアジアまで、マイク一本で世界を股にかけて現在も活躍している。

 

View this post on Instagram

 

Bianca Del Rioさん(@thebiancadelrio)がシェアした投稿

余談ではあるが、ビアンカ・デル・リオと吉本新喜劇のすち子がそっくりだと言われており、ビアンカのインスタグラムにもすち子が登場したことがある。

いつの日か、西のビアンカ・東のすち子が対面することがあるのだろうか。注目しておきたい。



自分に打ち勝つ勇敢な姿を見せてくれた
トリニティ・K・ボネット

生まれてから一度も「自分の殻」を感じたことのない人間は少ないだろう。他人を自分を比べ劣等感を感じたり、人前で自分をうまく表現できなかったり、自分が思う自分と他人の評価にギャップを感じ自信を失ったりと、学校・家庭・恋愛・仕事さまざまな面で「思うようにならない自分」を感じ、他人のせいにしてはみるが、結局戦うべきは他人でなく「自分」であるという場面に直面する。そんな人間誰しもが感じる「自分という妨害者」に、視聴者の前で打ち勝って見せたのが、Trinity K Bonet(トリニティ・K・ボネット)である。

トリニティはエピソードごとに出される課題において、うまく自分をさらけ出せず自信をなくしていた。「ル・ポールのドラァグレース」のすごいところは、そんな人間の内面的な部分にも審査のメスが入り、打ち勝てなければ次の高みには到達できないのだ。そんな時に、エピソード7のコスメキャンペーン・チャレンジでペアになったのが、前述したBianca Del Rio (ビアンカ・デル・リオ)だった。エピソード14(ファイナル)のインタビューにおいても、彼女自身が自分の殻を破るきっかけになったのはビアンカだと語った。

エピソード7のコスメキャンペーン・チャレンジでは二人でペアを組み、コスメをプロモートするのだが、トリニティはテーブルでアイデアを練っている間、ビアンカから何か良いエネルギーを感じその瞬間から「簡単よ!私にはできる!」と、否定的な考えで凝り固まっていたものが突然変わったのだとか。ビアンカはこのチャレンジで「自信をもって!」「必ずできる!」と、トリニティを励ましていた。ペアになる以前は、お互い良い印象を持っていない者同士だったにも関わらずだ。

エピソード8のコメディ・ショーでトリニティは、自分が貧しい家庭で育ったことを笑いに変え、堂々としたステージで会場を笑いに包んだ。自分の殻を見事に打ち破り清々しい表情で審査員の前に立ったトリニティにRupaul(ル・ポール)は、「自分という妨害者に勝ったあなたを、誇りに思う」と涙を浮かべた。長いキャリアの中、人々の酷評に晒されながら自分を表現していくことの難しさ痛いほど知るル・ポールだからこそ、彼女の挑戦と克服がどれほど意味のある事であるか心から理解できるのであろう。見ている私までも、心が熱くなる瞬間であった。HIV保有者だという彼女のカミングアウトも含め、勇気を出して自分のストーリーを話すこと、同じような境遇の人々の代弁者になることの大切さを、身をもって示してくれた。

またトリニティは、このシーズンでリップシンク・キラーと言われるほど、見事なリップシンクを披露している。3度ボトム2になり、そのうち2度もリップシンクによって、脱落を免れた。彼女が「自分の殻を破る」という大きな人生の課題を成し遂げるという伏線が、リップシンクで見せる情熱的な表現の中に、すでに隠されていたのように思う。



何だかんだ言ってもキレイって無敵!
コートニー・アクト

登場シーンでは、ドラッグクイーンに紛れて本物の女性が登場したのか?と思わせるほど飛びぬけた美貌と完璧なスタイルの持ち主であるCourtney Act(コートニー・アクト)は、ゲスト審査員のクロエ・ガーダシアンに「私はあなたになりたい。だってあたなのスタイルは驚異的」と言わしめた。

元々出身のオーストラリアでは、「Australian Idol」で活躍したことですでに有名人だった。2014年のル・ポールのドラァグレース・シーズン6では惜しくも優勝を逃したものの、その後の活躍もまた目覚ましく、2018年にはイギリスの「Celebrity Big Brother UK」では優勝、同じくイギリスのバイセクシャル・リアリティ番組「The Bi Life」にも出演した。2019年には自国オーストラリアの「Dancing with the Stars」で、史上初の同性同士のダンスペアとして話題を呼んだ。オーストラリア・アメリカ・イギリスと、活動の拠点をどんどん広げている。

ダンス・ファッション・歌・演技どれをとっても彼女は本当に驚異的なほど美しい。シーズン6において審査員には「美しいだけ」と言われることもあったが、今の彼女の活躍を見ると、美しいうえに努力を重ね、そして自分を信じて挑戦を止めない姿勢を見ることができる。次はどんなチャレンジを魅せてくれるのか、本当に楽しみだ。


「ル・ポールのドラァグ・レース」おすすめリップシンク5選

「ル・ポールのドラァグレース」シーズン1の見どころ

「ル・ポールのドラァグレース」シーズン5見どころ・感想

「ル・ポールのドラァグレース」シーズン8の見どころ



コメントする