「幼少の頃からバレエをたしなみ、今でも体は柔軟だ。」そんな人には分かるまい。体が硬いという劣等感を。その劣等感を無情にも拡大させるポージング、それが「開脚前屈」なのだ。
柔軟な体を目指しヨガ教室に通うも、教室に通う必要もないほど体柔らかな周りの生徒さんは、美しくしなやかな開脚前屈。一方自分はというと、「死にかけの太ったおじさんカエル」の如く、哀れで滑稽な姿。
それが、毎日たった3分の体操で、ベタッーと開脚前屈に近づけたなら・・・諦めかけた硬い体に、少しでも希望の光をくれる、ありがたい体操を紹介する。
◆目次
真向法とは
「真向法」という言葉を聞いたことがあるだろうか。困ったときの神頼みと大勢で祈る団体と思われがちなネーミングだが、むしろスピリチュアルの真逆。まだ見ぬ未来に心を向けるよりも、現実的かつ物理的に真っ向から心身と向き合う健全な健康体操、それが真向法だ。
「真向法」は、昭和8年、長井津(わたる)氏によって創案され、80年以上もの歴史を持つ健康法だ。単純な四つのポーズを3~5分繰り返し行うだけで、体が緩み健康を保つというもの。
私が「真向法」を知ったのは、書店で偶然見かけた『かんたん開脚で超健康になる!: たった4つの「真向法」体操 (王様文庫)』という文庫本だ。
その前にベストセラーになった『どんなに体がかたい人でもベターッと開脚できるようになるすごい方法』も少しやってみたが、何だか続く気がせず断念。そんな時に目に飛び込んできたのが、『かんたん開脚で超健康になる!: たった4つの「真向法」体操 (王様文庫)』だ。
文庫本は小さく600円前後とお手頃。体操も1日3分と書いているし、工程も少なく簡単そうだから試しに買ってやってみようと思い立ってはや2年以上になるが、今でも毎日続けることができている。
そんな真向法はどんな体操か?詳しく見ていく。
真向法の、4つの体操
体操は、第一体操から第四体操までのたった4種類!
第一体操「股関節周辺をやわらかくする」
(1)膝を開きかかとを揃えて座る。顎を引き、胸を張り背筋はまっすぐにする。この時足の裏を上に向けておく。
(2)それから、背筋をまっすぐに伸ばしたまま、息を吐きながら上体を前に倒していく。次に息を吸いながら上半身をがら起こし、最初の最初の(1)の姿勢に戻る。
この動作を10回行い、第二体操へ移る。
第二体操「脚の裏側の筋肉をやわらかくする」
(1)長座の姿勢で座る。足首は直角に立て、背筋を伸ばして胸を張る。
(2)背筋を伸ばしたまま息を吐きながら、足首の方へまっすぐ上半身を前傾させる。手は両脚に添わせるようにし、可能であれば腹・胸の順に上半身を脚につける。
最後まで倒しきったら、今度は息を吸いながら(1)の姿勢に戻る。
この動作を10回行い、第三体操へ移る。
第三体操「脚の内側の筋肉をやわらかくする」
(1)第二体操の姿勢からそのまま両端を広げる(初心者の開脚角度は90度くらいでもよい)。
足首を立て、膝と背筋をまっすぐに伸ばし、正面を向く。
(2)息を吐きながら、ゆっくりお腹を押し出すようにして上半身を前傾させる。倒しきったら、息を吸いながら(1)の姿勢に戻る。
この動作を10回行う。
第四体操に移る前に
1つの体操につき、10回の屈伸を行う。1つの体操には約20秒かけ、「第一体操 → 第二体操 → 第三体操」の1ラウンドを、2~3ラウンド行ってから、第四体操へと移る。
第四体操「脚の前側の筋肉をやわらかくする」
(1)正座したあと、両足をお尻の幅だけ開いて「割座(わりざ)」の姿勢になる。
足首は床にピッタリとつけ、背筋はまっすぐに伸ばす。
(2)手をつきながら、静かに上半身を後ろに倒す。両手を伸ばしバンザイの姿勢をつくり約1分間、その姿勢のままで大きく静かに深呼吸をする。
以上が、真向法の工程になる。
真向法協会が提供するyoutube解説が分かりやすいので、ぜひ参考にするといい。
いつ、何回やるのか?
1つの体操が20秒と換算し、「第一体操 → 第二体操 → 第三体操」の1ラウンドが合計60秒(=1分)
1ラウンドを2回行い、2分。
その後第四体操を1分間行い、合計3分の体操となる。
この体操いつやるのかというと、朝晩の2回が効果的だ。(満腹時は避ける)
朝は、朝食前の寝起き。朝の真向法は、寝ている間に硬くなった筋肉をほぐし、各部の機能にエンジンがかかるため、一日のよいスタートとなる。
晩は、風呂あがりや寝る前。風呂で温められた筋肉はやわらかくなりやすく、日中の仕事で凝り固まった筋肉を緩め熟睡へと促すのだ。
というわけで、朝晩の2ラウンド、余裕があれば2ラウンドを3ラウンドにして毎日2度行うのがよいとされている。
毎日続けるためのコツ
1回3分、毎日朝晩2回で合計たった6分と大変簡単なことはいいのだが、続けなければ意味がない。真向法ができて80数年、私が真向法を始めてまだ2年半と、かなりの新参者ではあるのだが、曲がりなりにも体験してきた続けるためのコツを僭越ながら紹介する。
1.あせらない
私が読んだ『かんたん開脚で超健康になる!: たった4つの「真向法」体操 (王様文庫)』には、真向法の解説からどのような健康効果的があるのか詳しく書かれている。そのほかに、真向法を続けている方々の体験談も掲載されている。1ヵ月で効果が出始めたことや、体重が5クロ減っただといった喜びの声が書かれてある。自らスタートし始めの頃は、人の成果を目標に自分も頑張れる。しかし1ヵ月・2ヵ月経っても、自分には劇的な変化は見られなければ、「やっぱり自分には無理だなんだ!」と途中であきらめてしまうのがパターンである。
3ヵ月続けてもまったく変わらなくとも、こんなに簡単な体操が続けられなければ、それ以上のことは難しいだろうと思って、気長にやるのがよい。
2.無理しない
筋肉を伸ばすのに「痛気持ちいい」のはよい。ただ半年で結果を出さなければ!と、かなりの痛みを我慢して無理に筋肉を伸ばすのは、よくない。私自身も無理やり広めの開脚をしてしまい、開脚をする度に筋が痛み、せっかく毎日張り切ってしていた真向法の第三体操を控えなければならない時期があった。そうなっては、せっかくやわらかくした筋肉を、またイチからスタートせねばならず台無しである。
また痛いのを我慢してまで筋肉を伸ばすと、体は筋肉を守ろうとし逆に筋肉を固くしてしまう。
最初のうちは「いつまでにできるようにする!」といった無理をするような目標は設けず、毎日やり抜くことに集中することをおすすめする。
3.昨日の自分と比較しない
人間は日々変化する。心が落ち込んだりはしゃいだりするように、体にも浮き沈みがある。昨日は頭までついていた開脚前屈は、今日は硬くてできない。すると、できない自分にあせり無理をすることにつながり、悪循環となる。
自分どころか誰とも比較せず注力すれば、体の小さな変化に目を向けやすくなり、ある日ふと気が付けば、できなかったことができているのである。
毎日続けた結果、開脚前屈はできたのか!?
先にも述べたが、私は現時点で2年半の間、朝晩の真向法を続けている。時にはおさぼりもあるものの、最低でも毎日1回は必ず行っている。
その結果、開脚前屈はできるようになったのか?
答えは、「できる」と言えるだろう。
しかし、時々おでごが床につくまでは行くもの、まだベターっとまでは行きついていない。
ただ、最初の頃と比べると歴然たる違いがある。
第一体操では、股関節の動きに詰まる感覚があったが、今では抵抗感なくすんなりできている。
第二体操は、膝を少し曲げなければ長座の姿勢がとれなかったものが、今では膝をまっすぐに、顔が太腿につくほどベターっとした前傾姿勢に成功している。
一番肝心の第三体操・開脚前屈はと言うと、当初は90度の開脚もやっとだったものが、今では140~150度は開くようになった。また無理して前傾したことにより何度も足首や筋を痛めていたが、今ではそれはなくなった。
1年くらい続けたあとに、ようやく「呼吸」の重要性が理解でき、吐くときに前傾、吸うときに戻すという動作を意識的にできるようになったことが、無理してまで前傾しなくなった一番の要因だろう。(この呼吸にかんしては、理屈もいろいろあるだろうが、理屈ではなく吐きながら筋肉を伸ばすことを意識するとしないでは、伸び具合がまったく違うのだ。)
そして、真向法を通して一番の大きな変化は、「腰が立つ」ようになったことだ。
真向法を行う前は、体が硬く左のように腰をまっすに立てることができなかった。
今では第二体操でも第三体操でも、しっかりと腰が立ち、腰から背中までをまっすぐな姿勢で前屈することができている。要は、骨盤の歪みが確実に改善されていることの表れだ。
真向法をはじめる前の方が気になるのは、いつ頃から変化が表れるのかということだろうが、私の場合「気がつけば」であった。
本には3ヵ月で劇的効果が表れたなんて書いてあったために、自分も3カ月後には180度に近い開脚を決めてかっこよく前屈ができるようになるのだろうと思っていた。しかし、3ヵ月どころか半年経っても変化はなく、「死にかけの太ったおじさんカエル」のような腰も立たない硬い体のままであった。当然、あせるし無理をして筋も痛めた。
とは言え、せっかく始めたことを止めるのももったいないため、何となく続けていた。1年くらい経ったある日旅行先でも真向法を実践していると、友人に以前よりだいぶ体がやわらかくなっていることにかなり驚かれた。
毎日コツコツやってれば、何からの効果はあるものだと感心し、真面目に真向法をするようになったのだ。
思い描く夢の「ベターっと開脚前屈」はまだ発展途上であるが、毎日簡単に継続でき健康維持にも役立つ真向法なら、これからも夢の到達まで諦めることく続けられそうである。