こんなイケメン知らなきゃ損!
現代人におすすめする市川雷蔵・映画!3選

リアルタイムで市川雷蔵を知る訳ではないが、とにかく市川雷蔵が好きだ。色気・立ち振る舞い、そしてそこはかとない虚無感。どの表情をとっても魅力的で、現代に相当する俳優がいない唯一無二の存在だ。

2019年は市川雷蔵の没後50年となり、夏から特別企画「市川雷蔵祭」が開催される。それに先立ち、市川雷蔵を知らない人でも虜になってしまうような三種三洋の市川雷蔵を堪能できる映画を3本紹介してみたい。

ぼんち

山崎豊子原作の小説「ぼんち」を映画化したもの。大阪・船場にある足袋問屋の一人息子・喜久治は奔放な女性遍歴を繰り広げるも、何ともお気楽で憎めない。大阪・船場のぼんぼんを見事に体現した映画だ。

この映画で雷蔵が素晴らしいところは、他の出演映画では見慣れないその「軽さ」にあると感じている。老舗が軒を連ねる船場の町で、ガチガチに固まった船場しきたりをひょいと飛び越えるように、バランスを取りながら世を渡り歩く。ついさっきまで妾Aだったのに、しれーっともう次の妾Bに行っているという具合に。またそこいらの「ぼん」と格が違う「ぼんち」だけあって、どの妾に対してもお金の使い方が綺麗で、いやらしさがない。加えて「船場ことば」を使ったしなやかで美しい気品が、どんな状況であっても悲壮感を与えない。

何より、喜久治と関係する女優陣がすごい。中村珠緒、若尾文子、京マチ子、草笛光子に越路吹雪と実力と美貌を兼ね備えたトップ中のトップが勢ぞろい。女優たちが演じる船場女の所作の美しさと芯の強さに、つい見惚れてしまう。
男も女も、上品で粋なことこの上ない、そんな映画である。



大殺陣 雄呂血

元は阪東妻三郎主演のサイレント映画「雄呂血(1925年)」をリメイクした作品が、この「大殺陣 雄呂血」。

信じる心を無残に裏切られ、凛々しく清々しい青年から、みるみる悲壮感を背負うやさぐれ男になるも、悪人になりきれない主人公・拓馬。髪は乱れ頬はこけた暗闇に生きる男を演じながらも、眼の光を失っていない雷蔵の演技はすごい。

理不尽で救われないいじめの応酬に遭う中、女郎に売られた元許嫁(八千草薫)に再会してしまう。つぶさに奥底に秘めた目の輝きに真実が点り、数百人相手に命を燃やす10分以上にもわたる壮絶な殺陣シーンへと突入する。

自分が不幸にした女を守り抜くのは、懺悔なのだろうか希望なのだろうか。元許嫁波江に向かって「波江殿、負けてはならん。定めに押しつぶされてはなりませぬぞ!」と決死の戦いに向かう主人公・拓馬、いやもはや銀幕スター・雷蔵様に、当時の女性たちもキュンキュンしたに違いない。まるで自分は可憐な八千草薫になったかのような気分で。

数百人に囲まれる「大殺陣」シーンは、ほぼ長回しで撮影されている。獅子奮迅のごとく敵を斬っていく大立ち回りとは一線を画し、息も絶え絶えに這いつくばって剣を振りかざし、もうだめか次で息絶えるのかと首の皮一枚のところで死闘を繰り広げる。この映画の公開から約3年でこの世を去ることになる雷蔵を想像すると、この肉体の酷使は見ていて苦しくなる。それほどまでに、拓馬という男の残り少ない力を精一杯振り絞る、命を懸けた大殺陣を演じ抜いている。

哀切極めるストーリーと、雷蔵のデカダンスの中に見る洗練された美を見事なまでに感じられる映画である。



眠狂四郎 人肌蜘蛛

市川雷蔵と言えば、この作品を入れないわけにはいかない、ニヒリズムを極める「眠狂四郎」だ。シリーズ全12作品ある中で、今回紹介するのは「眠狂四郎・人肌蜘蛛」。市川雷蔵の眠狂四郎は、雷蔵の魅力で成り立っているといって過言ではない。低くゆっくりと話す声色に、孤独を感じる眼差しと影。公開当時からファンであった奥方たちが、今でも変わらず雷蔵様に魅せられ続ける理由は、一度あの色気を感じれば簡単に理解できるだろう。

この作品のざっくりとした筋は「残虐な限りを尽くす兄妹と、それに挑む眠狂四郎」。しかし眠狂四郎での見どころは、ストーリー展開よりも、眠狂四郎の有り余る陰の魅力で、「いかにスマートに斬るか」、そして「いかに速攻で女をものにするか」である。もちろんこの作品でも、サディスティックで共謀な姫様(緑魔子)をも眠狂四郎の手中に…

江戸川乱歩作品に見るようなカルト的なおどろおどろしいエロティシズムを、緑魔子の妖艶な美貌と凍るような白い肌が、この作品を一層異質でなまめかしいものへと引き上げている。

最後に

市川雷蔵という俳優をリアルタイムで知っている年代は年々少なくなっていく。しかし匂い立つ色気と上品な所作は決して色あせず、時代が進み物が溢れ人々が唯物主義に取りつかれた現代においては、むしろ色鮮やかに映る。

だから若い世代の人々にも、市川雷蔵を知ってもらい雷蔵の美感に触れてほしい。市川雷蔵映画に親しみ、そしていつか近所の映画館でも市川雷蔵作品が見られるようになると、非常に嬉しく思う。


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