「ル・ポールのドラァグレース」メインチャレンジ
お気に入りの『ルージカル(Rusical)』

「ル・ポールのドラァグレース」にはメインチャレンジとして、歌(リップシンク)と踊りそして演技とを組み合わせたミュージカルの課題、その名も『ルージカル(Rusical)』がある。
シーズン11でのトランプ大統領を題材としたルージカルが、最近では新しい。ファッションセンスやボトム2によるリップシンクと違って個人の技量だけでなく、チームワークやいかに役にはまれるか、大勢の中でいかに目立つことができるかが鍵となる。またクイーンにとっては覚えるたり苦手分野に挑戦することが多い、難しい課題。しかし見るほうにとっては、ミュージカルに加え、”ものまね”の要素もあったりして、実に楽しい!そんな楽しいルージカルの中から、何度も見たくなるごっ機嫌な『ルージカル(Rusical)』を紹介する。


クイーンたちが楽しそう!
シーズン8『Bitch Perfect』


大学生のアカペラガールズグループが、歌って踊って恋して、そして笑わせまくるミュージカルコメディ映画『ピッチ・パーフェクト(Pitch Perfect)』を題材としたこの課題の名は『ビッチ・パーフェクト(Bitch Perfect)』。その名の通りビッチな2チーム・優等生チームの「ザ・レディ・ビッチ」と、ちょっと悪めのガールズチーム「シェイディ・ビッチ」が、ルポールの楽曲でアカペラ対決するという設定だ。

もちろんリップシンクであるため、音と口があっていることは第一前提であるのだが、楽しいクイーンが多いシーズン8の特徴なのか、自分をよく見せようとするクイーンよりも、いかに面白くするかに徹したクイーンの”なりきり度”の高さが、何度も見たいという気持ちにさせる。

この『ビッチ・パーフェクト(Bitch Perfect)』は、細かく見れば見るほど、いちいち面白い!

「シェイディ・ビッチ」チームのアシッド・ベリー(Acid Betty)やソージー・ソー(Thorgy Thor)は、軽快な動きに加え不良を絵にかいたようなドヤな顔芸がすごい!チチ(Chi Chi Devayne)のダンスは、まさにシェイディ・ビッチ(影ありピッチ)と言わんばかりの、ヤンキーっぷりがかっこいい。そしてこのスケパンチームを、一気にムーディーにしてくれるのが、ナオミ(Naomi Smalls)のセクシーな決め顔と、小股も大股も切れ上がり過ぎて見惚れる美脚だ。皆ノリノリで楽しんでる感じかヒシヒシ伝わる。

もちろん、「ザ・レディ・ビッチ」も負けてはいない。ダンスが苦手で練習ではステップに苦労していたが、本番では役に入り込んで堂々と空想好きのブリブリのメガネっ子を演じるキム・チー(Kim Chi)が面白い。ロビー・ターナー(Robbie Turner)のボイスパーカッション(もちろんこれもリップシンク)や細かい動きもいい味出しているし、シーズン9にも出場したシンシア・リー・フォンテーヌ(Cynthia Lee Fontaine)なんて、張り切り過ぎて靴を飛ばしてしまうほど。あと、ブリトニーが得意なだけあってやっぱりデリック・ベリー(Derrick Barry)って華がある。皆小技が効いていて笑える。

やんちゃでかっこいい「シェイディ・ビッチ」と、全体的に少女漫画っぽい「ザ・レディ・ビッチ」のリップシンク対決は、仲の良い同級生の学芸会での振り切った演技を突如見せられたような、心躍る楽しさがある。シーズン8の『ビッチ・パーフェクト』は、見ている最中も見た後も、愉快で気持ちを元気にさせてくれる。

ちなみに、『ビッチ・パーフェクト』を見る前に本元となる映画『ピッチ・パーフェクト』を見た方がいいがいいかと言えば、どちでもよい程度。私自身もシーズン8を見た後に気になって映画を見たくちだ。「ル・ポールのドラァグレース」には影響しないが、映画『ピッチ・パーフェクト』は映画として大変面白いので、おすすめだ。

「ル・ポールのドラァグレース」シーズン8の見どころ



ものまねショータイム!
オールスター3『Divas Lip Sync Live』

ミュージカルとリップシンクを併せたルージカルと言えるものは、先に紹介したシーズン8のほか、シーズン6・9・10・11にもある。今回ルージカルについて書こうと決め、改めてルージカルをいくつか見返した。Netflixで見れるオールスター以外の中から選ぼうとしたのだが、一度オールスターを見てしまうとクイーンたちの実力の差が歴然なため、どうしてもオールスターから選びたくなる。というわけで、オールスター3のエピソード2で披露された『Divas Lip Sync Live』を紹介する。

『Divas Lip Sync Live』とは、歌姫たちのリップシンク・ライブ。ドラァグクイーンが、誰もが知る歌姫に扮し、ものまねリップシンク・ライブをルポールの楽曲にのせて披露する。

このチャレンジは、一見ただのものまねショーのように見えて結構難題。というのも、まねる対象はどれも有名な歌姫だ。誰もがその歌い方や話し方の癖まで、よく知っている。通常の口パク・振付に加えて、その歌姫がしそうな踊り方や表情を分析して自分のものにアレンジし、歌姫の楽曲ではなくルポールの楽曲でパフォーマンスを行わねばならない。完全に歌姫が憑依したように成り切ったパフォーマンス、いわばどのクイーンもものまね芸人の”コロッケ”に近いレベルを求められるのだ。

ものまねラインナップは次の通りである。ミルク(Milk)がセリーヌ・ディオン、ケネディ・ダベンポート(Kennedy Davenport)がジャネット・ジャクソン、アジャ(Aja)が存在感と歌唱力で魅了し27歳の若さで亡くなったエイミー・ワインハウス、チ・チ・ドゥベイン(Chi Chi DeVayne)がソウル歌手のパティ・ラベル、トリクシー・マテル(Trixie Mattel)がカントリー歌手のドリー・パートン、シャンジェラ(Shangela)がマライア・キャリー、ソージー・ソー(Thorgy Thor)が”ロックの歌姫”と呼ばれるスティーヴィー・ニックス、ベン・デラ・クリーム(BenDeLaCreme)が”ドレミのうた”で知られる映画『サウンド・オブ・ミュージック』主演のジュリー・アンドリュース(Julie Andrews)、そして大トリはベベ・サアラ・ベネット(BeBe Zahara Benet)のダイアナ・ロスと、総勢9人のドラァグクイーンが次々と入れ替わる、楽しいものまねショータイム!

中でも笑いを誘ったのが、シャンジェラのマライア。ゆったりとして優雅、だけど露出狂。世間のマライアに対するイメージを完全につかんで、モノにしている。シャンジェラと言えばビヨンセのはずが、もうお花畑にいるマライアにしか見えない。

そして目を見張ったのがベン・デラ・クリームのジュリー・アンドリュース。ジュリー・アンドリュースを『サウンド・オブ・ミュージック』の歌のシーンくらいしか知らないが、クラシカルで生真面目で純粋な女性の雰囲気を残しながら、ラップに乗せて激しく歌って踊って笑いも取るという、文字にするだけでも難易度が高そうな芸当を、努力の跡を感じさせずにサラリと魅せる。ほんとすごいよ、ベン・デラ・クリーム。



七人のドラァグ・プロ集団!
オールスター2『HERstory of the World』

芸達者が集まるとこうも素晴らしくなるものか!と、感服する圧巻のステージパフォーマンス!
個人的にベストシーズンだと言えるシーズン5から、アリッサ・エドワーズ(Alyssa Edwards)、ロキシー・アンドリュース(Roxxxy Andrews)、ディートックス(Detox)、アラスカ(Alaska)の4人。シーズン7でも別格なほどの演技力と芸達者ぶりを見せたジンジャー・ミンチ(Ginger Minj)と、同じくシーズン7のコメディエンヌで人気者・カティア(Katya)。そして、シーズン4から当たり屋兼すご腕の実力者のフィフィ・オハラ(Phi Phi O’Hara)と、「ル・ポールのドラァグレース」を代表するような人気のメンバーが集結した見ごたえのある、まさに”プロ”のステージ。

通常シーズンでのリップリンクでは、口と音が合っていないクイーンが多々見かけられるが、オールスターでしかもこのクラスになるとそんな初歩的なミスは一切ない。リップシンクは完璧なうえで、いかに人を楽しませるかという卓越したエンターテイメント魂を感じる。

『HERstory of the World』は、読んで字のごとく、歴史上のさまざまな”彼女”が登場する。アリッサ・エドワーズはオハイオ生まれの射撃の名手アニー・オークレイ(Annie Oakley)を、ディートックスは嘘か誠か「パンがなければケーキを食べればいい」と言ったフランス国王ルイ16世王妃マリー・アントワネットを、ロキシー・アンドリュースは”エビータ”の名で知られるアルゼンチン大統領夫人エバ・ペロン(Eva Peron)を、アラスカは旧約聖書においてアダムと共に禁断の果実を口にしたイヴ(Eve)を、フィフィ・オハラはギリシア神話に登場するトロイのヘレン(Helen of Troy)を、カティアはご存知イギリス元皇太子妃のダイアナ妃を、ジンジャー・ミンチはロシアの皇帝エカチェリーナ2世を、それぞれ演じる。

間延びすることなくテンポも間合いも絶妙、つなぎ目も素晴らしく、スポットライトが当たっていない時間も表情で演技をし続ける、見ていて飽きることがない。揺るぎない安定感はさすがの一言。これほどプロの技を発揮しても、このうちの一人が脱落させられるなんて、無常過ぎる。オールスター2が、いかに高レベルなコンペティションであったかがよく分かる。

スタンディングオベーション&リピート必至の、優れたショーパフォーマンスだ。

ルージカル・ベストクイーンは?

3つの素晴らしいチャレンジを紹介したが、その中で私が一番ブラボー!と拍手を送りたいクイーンはと言うと、リップシンクをするドラァグクイーンではなく、圧倒的な歌唱力と納得のものまね、そして巧妙なタイミングで感動と笑いを巻き起こす、そのクイーンとは!?「ル・ポールのドラァグレース」で、さまざまな歌で美声をふるわせる顔の見えない”ボーカリストたち”だ!

時にアカペラで美しいハーモニーを聞かせ、ジャネット・ジャクソンやエイミー・ワインハウスといった歌姫のものまねで耳を楽しませ、ロック・オベラ・サンバ何でもござれと歌い上げる。彼女たちこそ、ベスト・オブ・クイーンの『Divas(歌姫)』に違いない!




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